「AI検索が普及したら、ブログってかなり厳しくなるのでは?」
最近ずっと、これが少し気になっていました。
今のブログの広告モデルはかなり単純です。検索結果から人がブログに来る。記事を読む。広告が表示される。そこで初めて広告収益が発生します。
ところがAI検索では、AIが複数のWebサイトから情報を集め、その場で回答を作る。ユーザーがそこで満足すれば、元の記事まで来る必要がありません。
では、AIに記事を読まれたサイト運営者には何か収益が入るのでしょうか。
現状、普通のAdSenseでは基本的に入りません。
AIが記事を読んでも、AdSenseの「1PV」にはならない
Google AdSenseでは、広告のインプレッションは広告がユーザーのデバイスへダウンロードされ始めたときにカウントされます。また、Googleは自動化されたロボットなどによる広告アクセスを無効なトラフィックの例として挙げています。
つまり、
AIクローラーが記事のHTMLを取得した = 広告が人間に表示された
ではありません。
AIがこちらの記事を読んで、AI検索の画面上でユーザーに答えてしまえば、サイト側では広告表示が発生しない。
従来の「検索 → ブログ → 広告」という導線が、「検索 → AIが回答 → 終了」に変わる可能性があります。
実際、AI要約が出ると外部サイトへのクリックは減っている
これは単なる想像でもありません。
Pew Research Centerが2025年に米国のGoogle利用を調査したところ、AIによる要約が表示されなかった検索では15%の訪問で通常の検索結果がクリックされたのに対し、AI要約が表示された場合は8%でした。
しかも、AI要約内に表示された出典リンクそのものがクリックされたのは約1%です。
もちろん、この結果だけで「AI検索によってすべてのブログ流入が半減する」とまでは言えません。テーマや検索意図によって影響はかなり違うはずです。
それでも、AIが答えを出すほど、情報サイトまで人が来なくなる場面が増えるという問題は、かなり現実的になっています。
だったら、AIが情報を使ったこと自体を課金できないのか?
ここまで考えて、改めて調べてみました。
すると面白いことに、まさにその仕組みが世界で作られ始めていました。
代表的なのが RSL(Really Simple Licensing) です。
RSLは、Web上のコンテンツについて、無料利用、出典表記、購読、クロールごとの課金、AI回答生成での利用ごとの課金などの条件を、機械が読み取れる形で表現するためのオープン標準です。
公式仕様には実際に pay-per-crawl と pay-per-inference が定義されています。
特に面白いのが pay-per-inference。
AIがコンテンツを使って回答を生成するたびに、コンテンツ所有者へ対価を支払う、という考え方です。
私なりに言えば「情報版JASRAC」に近い
さらにRSLには、非営利組織の RSL Collective があります。
一つ一つの小さなWebサイトが巨大AI企業と個別に利用条件を交渉するのは現実的ではありません。
そこで、たくさんの出版社やクリエイターの権利をまとめ、AI企業とのライセンス交渉、利用状況の管理、請求やロイヤリティ分配までをまとめて行おうとしています。
RSL Collective自身も、音楽分野のASCAPやBMIのような集合ライセンス組織を例に説明しています。
日本人向けにかなり乱暴に言えば、これは「情報版JASRAC」に近い発想だと思います。
もちろん、JASRACとRSL Collectiveは制度も法的な立場も同じではありません。ここでは「多数の権利者を束ね、利用者側とまとめてライセンスし、利用料を分配する」という構造の比喩です。
RSL Standardの公式発表では、Reddit、Yahoo、O’Reilly Media、Medium、Ziff Davis、People Inc.など複数の出版社・Web企業が支持企業として挙げられています。
Cloudflareは「AIが読むなら課金」を実装し始めている
さらに具体的なのがCloudflareです。
Cloudflareは Pay Per Crawl という仕組みを開発しています。
サイト運営者がAIクローラーに対して価格を設定し、AIがそのページへアクセスすると、支払い意思を示していればHTTP 200でコンテンツを返し、条件を満たさなければ HTTP 402 Payment Required を返す仕組みです。
Cloudflareが決済基盤まで提供します。
2026年8月時点ではPay Per Crawlはまだclosed betaです。つまり、誰でも今日からこれだけでAI収益を得られる段階ではありません。
それでも重要なのは、これはもう単なるアイデアではなく、価格設定・アクセス制御・決済まで含んだ技術として実装され始めていることです。
だからといって「ブログ復活確定」ではない
ここは分けて考えた方がいいと思っています。
RSLを書けば、すべてのAI企業が必ずお金を払ってくれるわけではありません。
CloudflareのPay Per Crawlもまだベータです。
著作権、契約、技術標準、利用量の計測方法、ロイヤリティ分配など、まだ未確定な部分は多い。
だから、
「もうすぐAIがブログを読むたびに全員へお金が入る」
と考えるのは早すぎます。
ただし、
「AIはWeb上の情報を無料で取得し続け、情報提供側には何も戻らない」
という未来しかないわけでもなくなってきました。
ここはかなり大きな変化だと思います。
これからは「人の入口」と「AIの入口」を分ける
そこで、これからのサイト設計について考え方を少し変えた方がいいのではないかと思っています。
人間が読むのが得意な形式と、AIが情報として扱いやすい形式は違います。
人間には、写真、ストーリー、体験談、読みやすいレイアウト、関連記事への導線などが重要です。
一方AI側では、誰が書いた情報なのか、いつ更新されたのか、根拠は何なのか、どの概念と関連しているのか、どの範囲まで利用してよいのか、といった情報が明確である方が扱いやすい。
将来的には、RSL、構造化データ、API、MCP、ライセンス情報などもAI側の入口になり得ます。
ただし、Google検索に出るために「AI専用ページ」を別に量産しよう、という話ではありません。
Google自身も、AI OverviewやAI Modeに表示されるための特別なAI専用SEOは必要なく、従来のSEOの基本が引き続き有効だと説明しています。
つまり私が考えているのは、SEOテクニックではなく、同じ知識資産に対してHuman InterfaceとAI Interfaceを用意するという設計です。
では、AIが使いたくなるKnowledgeとは何なのか
ここから先は、まだ自分の中でも答えが出ていません。
AIが情報を利用する時代になるとして、では一体どんな情報なら「お金を払ってでも使いたいKnowledge」になるのでしょうか。
単に検索結果をまとめただけの記事なのか。
自分で経験したことなのか。
専門家だからこそ書ける知識なのか。
一次資料を読み込み、検証して整理した情報なのか。
長期間更新され続けたデータなのか。
あるいは、複数の情報をつなぎ合わせて構造化したKnowledge Baseそのものなのか。
ここはかなり重要だと思っています。
AIが簡単に生成できる情報を、さらにAIに売ろうとしても、おそらく価値は低い。
逆に、
- その人や組織しか持っていない情報
- 実測・体験・実験から得られた一次情報
- 更新され続けているデータ
- 出典や関係性まで整理された情報
- AIが安心して再利用できるように構造化された情報
には、これまでのPVとは違う価値が生まれる可能性があります。
Googleも2026年の生成AI検索向けガイドで、AI検索を意識したサイト運営において「価値があり、独自性があり、コモディティ化していないコンテンツ」の重要性を改めて強調しています。
だから今後は、単に記事数を増やすだけではなく、
どんなKnowledgeならAIが継続的に使いたくなるのか
を実際に模索していきたいと思っています。
3つのサイトを、その実験場にする
私は現在、複数のWebサイトを管理しながら、記事の探索、作成、評価、改善を繰り返す仕組みも作っています。
今後、この運用を半自動化していく予定です。
だからこそ、その設計思想に最初からこの未来を入れておきたい。
記事を公開して終わりではなく、記事から得られた知識を蓄積し、関連情報とつなぎ、更新し、人間向けの記事とは別にAIが利用しやすい形へ整えていく。
そして、
どのKnowledgeが人に読まれ、どのKnowledgeがAIに利用されるのか。
そこまで計測できるようになれば、これまでのブログ運営とはかなり違うものになります。
もしかすると、これから重要になるのは「強いブログを作ること」ではなく、
AIにも人間にも参照され続けるKnowledgeを持つこと
なのかもしれません。
この答えはまだ分かりません。
だからこそ、自分のサイトとシステムを使って、これから実際に探していこうと思っています。
「AI導入」ではなく「AIがいる世界への再設計」
最近いろいろなことをAIと一緒にやっていて感じるのですが、起きている変化は単純な「AI導入」ではないのかもしれません。
AIを既存システムに付け足すのではなく、AIが普通に存在する世界を前提として、既存の仕組みそのものを作り直す。
検索もそう。
広告もそう。
Webサイトもそう。
コンテンツの権利管理もそう。
今まで人間しか情報を消費しなかったインターネットに、巨大な「機械の読者」が現れました。
だったら、その読者を無視してWebを設計し続ける方が不自然です。
AI検索によって、従来型のブログ広告モデルは確かに厳しくなるかもしれません。
でも一方で、
「人が記事を読まなくても、情報そのものが使われれば価値になる」
という新しい収益モデルの芽も出始めています。
ブログという「ページ」が復活するのかは分かりません。
ただし、ブログで積み上げてきた知識そのものの価値は、むしろ再定義され始めている。
この辺りは、これから自分のサイトで実際に試しながら整理していきたいテーマです。
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参考資料
- Google AdSense Help: Impressions
- Google AdSense Help: Invalid traffic
- Pew Research Center: Do people click on links in Google AI summaries?
- RSL: What is RSL?
- RSL Collective: Collective Representation for the Internet
- Cloudflare: What is Pay Per Crawl?
- Google Search Central: AI機能とウェブサイト
- Google Search Central: A new resource for optimizing for generative AI in Google Search

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