2026年8月26日から28日まで開催されたIIBMP2026(2026年日本バイオインフォマティクス学会年会・第14回生命医薬情報学連合大会)に参加してきました。
今回が初参加です。
参加前は、ゲノム解析、トランスクリプトーム、データベース、各種解析アルゴリズムなど、いわゆる「バイオインフォマティクス」の話をかなり濃く聞く学会なのだろうと思っていました。
もちろん、そうした発表もたくさんあります。
ただ、3日間参加して最も強く残った印象は少し違いました。
思っていた以上に、「AIをどう研究に使うか」の会だった。
大会テーマ自体が「生成AI時代にバイオインフォマティクスがつなぐライフサイエンスコミュニティ」なので当然といえば当然ですが、生成AIが単なる話題枠ではなく、研究現場へかなり深く入り始めていることを実感した3日間でした。
AIは「便利な解析ツール」の一つではなくなりつつある
印象的だったのは、AIの使われ方の幅です。
LLMを使った情報抽出や解析だけでなく、AI coding、AIエージェント、仮説生成、研究の自動化、さらにPhysical AIまで話が広がっていました。
つまり、「この解析にAIを使いました」という段階だけではありません。
AIが論文を読み、コードを書き、解析ツールを操作し、結果を評価し、その結果から次の処理を考える。
研究プロセスそのものの中にAIをどう組み込むかという議論になっています。
一方で、「生成AI時代にバイオインフォマティクスをどう教育するのか」という話もありました。
PythonやRを書くこと自体が重要でなくなるわけではありません。ただ、AIがコードを書く能力を急速に高めている以上、「コードを書ける」というだけでは研究者の強みになりにくくなる可能性があります。
その先では、
何を解析するのか。結果をどう解釈するのか。次にどんな実験をするのか。
という部分が、より重要になっていくのでしょう。
展示会場にも「AI前提」の研究環境が見えた
企業展示もかなり面白いものでした。
解析サービスやソフトウェアを提供する企業が多いのは想像していましたが、高性能PCやServerなど、計算基盤そのものを扱う展示も複数ありました。
バイオインフォマティクスはもともと計算資源を大量に使うので、Serverが並んでいるだけなら特別なことではありません。
ただ、その使い方が変わり始めています。
研究データを外部へ出さず、組織内のServerに保持する。そのデータや解析環境をMCPなどを使ってChatGPTから扱えるようにする。
そんなサービスまで実際に展示されていました。
「研究データをChatGPTに渡す」のではなく、「ChatGPTを研究データのある環境につなぐ」。
AI単体ではなく、Server、データ、解析ツール、権限管理、LLMまでを一体として研究環境を作る方向です。
まだ「完成されたAI研究室」が普通に存在しているわけではありません。ただ、そのための部品はかなり揃い始めています。
植物のゲノム編集が出てくると、一気に自分の世界につながった
個人的にうれしかったのは、植物のゲノム編集を扱った発表もあったことです。
バイオインフォマティクスというとDry側のイメージが強いですが、結局、生命科学では予測したものを現実の生物で確かめる必要があります。
AIで候補を探す。配列を解析する。標的を決める。そしてゲノム編集し、植物を作り、表現型を見る。
ここまでつながると、情報科学とWetの境界はかなり曖昧になります。
むしろ今後重要になるのは、DryとWetをどれだけ速く往復できるかなのかもしれません。
AIによって公開論文や公開DBを調べるコストは急激に下がっています。一方で、AIがどれだけ賢くなっても、まだ世の中に存在しない実験結果は知りようがありません。
形質転換効率、再分化条件、栽培条件、系統差、失敗条件、装置差、研究者が経験的に知っているノウハウ。
こうした「ネットにないデータ」は、これから相対的に価値が上がっていくように思います。
個人的にも妙に刺さる学会だった
今回面白かった理由は、もう一つあります。
ちょうど個人で、ChatGPTとMCP、Server、Knowledge、AIエージェントなどをつないだPersonal AI Platformを作っているところだからです。
研究とは別の目的で始めたシステムですが、
AIがServer上の情報を読む。ツールを使う。処理を実行する。結果をKnowledgeへ戻す。
という考え方は、今回学会で見た研究環境の方向性とかなり重なっていました。
自分では個人的なAI環境を作っているつもりだったものが、生命科学の研究基盤としても同じ方向へ向かい始めている。
企業展示でMCPという単語まで出てきたときは、さすがに少し驚きました。
今回の学会では、新しい解析技術を学んだというだけでなく、今自分が作っているものを研究にどう接続できるかというヒントをかなり拾えた気がします。
バイオインフォマティクスは、AIと生命科学をつなぐ場所になるのかもしれない
初参加なので、IIBMPが以前からどのように変化してきたのかを比較することはできません。
ただ少なくともIIBMP2026については、私が参加前に想像していた「バイオインフォマティクス学会」よりも、かなり強くAI時代の生命科学をどう作るかを考える場になっていました。
AIがバイオインフォマティクスを置き換える、という話ではないと思います。
むしろ、
AI × データ × バイオインフォマティクス × Wet実験
をどう接続するか。
その接続部分に、これからのバイオインフォマティクスの重要な役割があるのかもしれません。
3日間参加してみて、想像していた方向とは少し違いました。
でも、その違いがかなり面白かった。
そして個人的には、思っていた以上に「自分が今やっていること」とつながった学会でした。
1日目の速報記事はこちらです。


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