前回、日本の宝くじ・スポーツくじ・競馬などについて、
「100円使ったとき、平均してどれくらいが払戻側に回るのか?」
を比較しました。
スポーツくじでは、売上金額の50%が払戻金の原資になります。
そこで前回は、
スポーツくじ ≒ 払戻原資率50%
を期待値を考える入口として使いました。
しかし、DUNKやBIGのようなキャリーオーバー型の商品を「その開催回の購入者」という視点で見ると、話はもっと複雑です。
なぜなら、
1等が出なければ、その回の1等賞金原資は現在の購入者には支払われず、次回へ持ち越される
からです。
逆にいえば、過去の購入者が残したキャリーオーバーが大量にあれば、現在の購入者は通常より大きな期待値を得られる可能性があります。
では、
キャリーオーバーはいくら積み上がれば期待値100%を超えるのか?
今回はDUNK10とBIGシリーズを実際に計算してみます。
- まず結論
- DUNK10の基本構造
- 1等が出なければ112.5円分は今の購入者には戻らない
- 第1回DUNK10の確定結果で計算してみる
- 第1回を買う直前の期待払戻率は約21.4%
- 実際の第1回ではどれくらい払い戻された?
- ではキャリーはいくらあれば期待値100%になる?
- なぜ約2.82億円では足りない?
- 1等キャリーだけでは約107.9%付近で頭打ち
- 「期待値100%なら理論上あり。でも大して儲からない」はかなりその通り
- ではBIGはどうなのか?
- 実際に50億円以上キャリーしても1口は6億円まで
- MEGA BIGはさらに極端
- 100円BIGも同じ
- 「1等キャリーだけ」で期待値をどこまで押し上げられるか
- なぜDUNK10だけ100%を超え得るのか
- しかし期待値107.9%でも「儲かりやすい」わけではない
- シリーズ「日本のくじ・公営競技を理系で計算してみた」
- 計算上の注意
- 主な参考資料
まず結論
計算すると、
DUNK10は条件次第で、単開催の期待払戻率が100%を超え得ます。
第1回DUNK10と同程度の販売規模を仮定すると、1等キャリーが約、
3億7,900万円
まで積み上がると、期待払戻率がほぼ100%になります。
さらに1等キャリーが十分大きくなれば、
300円に対して期待払戻額は約323.6円
まで上がります。
期待払戻率にすると、
約107.9%
です。
ただしこれは、
「1等キャリーだけを十分大きくし、下位等級には通常回の配分だけがある」
というモデル上の上限です。
そしてBIGシリーズは事情が違います。
通常BIG、MEGA BIG、100円BIGについて同じ考え方で計算すると、
1等キャリーだけでは期待払戻率100%には届きません。
キャリーが数十億円あってもです。
ここから順番に見ていきます。
DUNK10の基本構造
DUNK10は1口300円です。
10試合について、それぞれ4つの結果候補からコンピューターがランダムに選択します。
したがって1等確率は、
1 / 4¹⁰
つまり、
1 / 1,048,576
です。
払戻金原資は売上金額の50%。
そのうち1等への配分割合は75%なので、
50% × 75% = 37.5%
が1等賞金原資になります。
300円の1口あたりで見れば、
300円 × 37.5% = 112.5円
です。
残りの等級への通常配分は、
- 2等:15円相当
- 3等:6円相当
- 4等:6円相当
- 5等:10.5円相当
合計、
37.5円相当
です。
したがって、すべての賞金原資がその開催回の購入者へ払い戻されるなら、
112.5円 + 37.5円 = 150円
となり、300円に対して50%です。
しかし、キャリーオーバー型くじではそう単純ではありません。
1等が出なければ112.5円分は今の購入者には戻らない
DUNKでは1等当せん者がいない場合などに、1等賞金原資が次回へキャリーオーバーします。
つまり、1等がゼロなら、
売上の37.5%に相当する1等原資は、その回の購入者への払戻しにはならない
ということです。
お金が消えるわけではありません。
未来のDUNK購入者へ移ります。
ここが、
「制度全体として売上の50%が払戻原資になる」
という話と、
「今この開催回で1口買った場合の期待払戻率」
が一致しない理由です。
第1回DUNK10の確定結果で計算してみる
第1回DUNK10の最終販売実績は、
- 売上金額:85,578,600円
- 投票口数:285,262口
でした。
1等確率は、
p = 1 / 1,048,576
です。
ここで、285,262口が互いに独立にランダム生成されたと仮定します。
少なくとも1口の1等が存在する確率は、
1 − (1 − p)^285,262
です。
計算すると、
約23.82%
になります。
逆に、
1等が1口も存在しない確率は約76.18%
です。
かなり高い。
そして実際、第1回DUNK10では、
1等は0口
でした。
その結果、
32,091,975円
が第2回へキャリーオーバーしました。
つまり第1回は、実際に「約76.2%側」の結果になったわけです。
第1回を買う直前の期待払戻率は約21.4%
では、結果が分かる前に第1回DUNK10を1口買ったと仮定します。
キャリーオーバーは0円です。
1口300円から1等原資へ回る理論額は112.5円。
ただし、その1等原資が今回の購入者へ払い戻されるには、少なくとも1等が存在する必要があります。
その確率は約23.82%。
したがって1等部分の期待払戻額は、
112.5円 × 0.2382 ≒ 26.8円
です。
2~5等については当せん確率が高く、285,262口という販売規模では通常原資がほぼ払い戻されると近似できます。
その通常配分は合計、
37.5円
です。
したがって、
26.8円 + 37.5円 ≒ 64.3円
1口300円に対して、
約21.4%
となります。
ここで重要な注意
これは公式が公表している「DUNK10の期待値」ではありません。
本記事独自の、
「285,262口が互いに独立なランダム購入であり、キャリー0円の第1回を購入直前に評価する」
というモデルによる計算です。
実際の販売では重複買い目も存在しますし、端数処理などもあります。
したがって、
第1回DUNK10のモデル上の期待払戻率:約21.4%
と理解してください。
実際の第1回ではどれくらい払い戻された?
第1回DUNK10は実際に1等0口でした。
2~5等の払戻金合計は、
10,652,130円
でした。
売上金額85,578,600円に対して、
約12.45%
です。
つまり、
購入前のモデル上の期待払戻率:約21.4%
に対して、
実際に起きた第1回の払戻率:約12.45%
でした。
これは矛盾ではありません。
期待値は多数回繰り返した場合の平均です。
今回は1等が0口という結果だったため、1等原資32,091,975円は第2回へ移りました。
ではキャリーはいくらあれば期待値100%になる?
ここから本題です。
第1回と同じ、
285,262口
が販売されると仮定します。
キャリーオーバーをC円とすると、1等原資は、
今回売上の37.5% + C
です。
しかしDUNK10には重要な制限があります。
キャリーオーバー時でも、
1口あたりの1等最高額は3億円
です。
したがって、
- 自分自身が1等になる確率
- 他にも1等口が存在する確率
- 1等原資
- 複数当せん時の分配
- 1口3億円の上限
- 2~5等の通常期待値
を考慮する必要があります。
計算すると、こうなります。
| 1等キャリー | 300円あたり期待払戻額 | 期待払戻率 |
|---|---|---|
| 0円 | 約64.3円 | 約21.4% |
| 1億円 | 約147.8円 | 約49.3% |
| 2億円 | 約231.3円 | 約77.1% |
| 3億円 | 約291.5円 | 約97.2% |
| 約3.79億円 | 約300円 | 約100% |
| 4億円 | 約302.3円 | 約100.8% |
| 10億円 | 約323.5円 | 約107.8% |
第1回と同じ販売規模なら、
キャリーオーバー約3億7,900万円
で、ようやく期待払戻率が100%付近になります。
なぜ約2.82億円では足りない?
1等最高3億円という上限を無視すると、もっと単純です。
第1回規模なら、
約2.82億円
のキャリーで理論上の期待払戻率は100%になります。
しかし、この水準では1等原資がすでに1口3億円の上限に引っかかる可能性があります。
例えば1等が1口だけだった場合、
1等原資が4億円あっても、その1口に4億円全額を払うことはできません。
受け取れるのは、
最高3億円
です。
残った金額は再び次回へ繰り越されます。
つまり、
キャリーが増えても、その全額が現在の購入者の期待値に乗るわけではない
のです。
そのため実際の100%到達ラインは、
約2.82億円ではなく、
約3.79億円
まで上がります。
1等キャリーだけでは約107.9%付近で頭打ち
さらにキャリーを増やしてみます。
DUNK10の1等確率は、
1 / 1,048,576
キャリー時の1等最高額は、
3億円
です。
したがって、キャリーが十分に大きく、
1等になれば必ず3億円受け取れる
状態を考えると、1等部分の期待払戻額は、
3億円 ÷ 1,048,576 ≒ 286.10円
です。
下位等級の通常配分を約37.5円とすれば、
286.10円 + 37.5円 = 約323.60円
1口300円に対して、
約107.87%
となります。
ただしこれは、
「1等キャリーだけを十分大きくし、2~5等については通常配分のみ」
というモデルの上限です。
各等級への加算金など特殊な状況まで含めた絶対的な制度上限、と断言する数字ではありません。
それでも、
1等キャリーを大量に積めば期待値が何倍にもなる
わけではないことは分かります。
「期待値100%なら理論上あり。でも大して儲からない」はかなりその通り
期待払戻率100%なら、
300円 → 期待300円。
平均利益は、
0円
です。
さらに1等キャリーだけを極端に増やしても、
300円 → 約323.6円。
モデル上の期待利益は、
約23.6円
期待収益率は約、
+7.9%
です。
もちろん+7.9%という数字だけ見れば大きい。
しかし、その期待値の大部分は、
約105万分の1で3億円
という極端な結果によって形成されています。
これは株式投資で「期待リターン7.9%」という場合とは、まったく違うリスク構造です。
ではBIGはどうなのか?
BIGについても同じ考え方で計算します。
通常BIGは、
- 1口300円
- 1等確率:1 / 4,782,969
- キャリー時1等最高:6億円
- 払戻原資の80%が1等
です。
売上全体の50%が払戻原資なので、
300円 × 50% × 80% = 120円
が通常の1等原資相当。
残り2~6等への通常配分は、
30円相当
です。
では1等キャリーを十分大きくし、
「1等なら必ず最高6億円」
という状態を考えます。
1等部分の期待払戻額は、
6億円 ÷ 4,782,969 ≒ 125.45円
です。
下位等級の通常配分30円を加えると、
約155.45円
したがって、
155.45 ÷ 300 ≒ 51.8%
です。
つまり、
通常BIGは、1等キャリーだけをどれほど積み上げても期待払戻率100%には届きません。
実際に50億円以上キャリーしても1口は6億円まで
第1656回BIGでは最終的に1等が0口となり、
約51億3,113万円
が次回へキャリーしました。
50億円を超える大きな金額です。
しかし1等に当たった1口が受け取れる金額は、
最高6億円
です。
したがって、
「キャリー51億円 ÷ 販売口数」
のように、その全額がその回の期待値に乗るわけではありません。
これがキャリー型くじを考えるときの重要なポイントです。
MEGA BIGはさらに極端
MEGA BIGは、
- 1口300円
- 1等確率:1 / 16,777,216
- キャリー時1等最高:12億円
- 払戻原資の70%が1等
です。
1等キャリーを十分に大きくすると、
1等部分の期待払戻額は、
12億円 ÷ 16,777,216 ≒ 71.53円
下位等級への通常配分は、
300円 × 50% × 30% = 45円
なので、
71.53円 + 45円 ≒ 116.53円
期待払戻率は、
約38.8%
です。
第1656回MEGA BIGでも1等は0口となり、
約82億4,948万円
が次回へキャリーしました。
80億円を超えるキャリーが存在しても、1等は最高12億円です。
そのため、1口の期待値が80億円に比例して上がるわけではありません。
100円BIGも同じ
100円BIGは、
- 1口100円
- 1等確率:1 / 4,782,969
- キャリー時1等最高:2億円
- 払戻原資の76%が1等
です。
1等部分の最大期待払戻額は、
2億円 ÷ 4,782,969 ≒ 41.82円
下位等級の通常配分は、
100円 × 50% × 24% = 12円
なので、
約53.82円
期待払戻率は、
約53.8%
です。
第1656回では100円BIGには1等が1口出て、最高額の2億円が払い戻されました。
それでも余った1等原資の一部は次回へキャリーしています。
「1等キャリーだけ」で期待値をどこまで押し上げられるか
同じ条件で比較すると、
| 商品 | 1口 | 1等確率 | キャリー時1等最高 | 1等キャリーが十分大きい場合の期待払戻額 | 期待払戻率 |
|---|---|---|---|---|---|
| DUNK10 | 300円 | 1/1,048,576 | 3億円 | 約323.6円 | 約107.9% |
| BIG | 300円 | 1/4,782,969 | 6億円 | 約155.5円 | 約51.8% |
| MEGA BIG | 300円 | 1/16,777,216 | 12億円 | 約116.5円 | 約38.8% |
| 100円BIG | 100円 | 1/4,782,969 | 2億円 | 約53.8円 | 約53.8% |
この表を見ると、
1等賞金額が大きいほど有利なわけではない
ことが分かります。
重要なのは、
当せん確率 × 最高払戻額
です。
MEGA BIGは1等12億円。
DUNK10は3億円。
賞金額だけならMEGA BIGの方が4倍大きい。
しかし1等確率は、
DUNK10:約105万分の1 MEGA BIG:約1,678万分の1
と大きく違います。
そのためDUNK10の方が、キャリーが十分に積み上がったときの期待値は高くなります。
なぜDUNK10だけ100%を超え得るのか
かなり単純化すると、
1等キャリーによって期待値100%を超えられるかどうかは、
1等確率 × 1等最高額 + 下位等級の通常期待値
が購入価格を超えるかどうかで判断できます。
DUNK10なら、
1等部分:約286.1円 下位等級:約37.5円
合計、
約323.6円
なので300円を超えます。
一方BIGなら、
約125.45円 + 30円 = 約155.45円
であり、300円には届きません。
つまりDUNK10は現在の条件では、
キャリーが十分に積み上がれば、1等キャリーだけでもプラス期待値になり得る商品
ということになります。
しかし期待値107.9%でも「儲かりやすい」わけではない
仮に期待払戻率107.9%のDUNK10を買ったとします。
300円に対して、
期待払戻額:約323.6円。
数学的にはプラスです。
しかしこの期待値は、
約105万分の1で最大3億円
という極端な右裾から生じています。
多くの購入者が323円前後を受け取るわけではありません。
ほとんどの人は期待値よりはるかに低い結果になります。
では、
期待値100%のくじを、
100回 1,000回 1万回 10万回
と買った場合、損益はどう分布するのでしょうか。
期待値が100%なら、たくさん買えば簡単に収支ゼロへ近づくのでしょうか。
次回はモンテカルロシミュレーションを使って、
「期待値100%でも儲からない? 分散と当選確率」
を実際に計算します。
シリーズ「日本のくじ・公営競技を理系で計算してみた」
- 宝くじ・DUNK・競馬、100円で平均いくら戻る?
- キャリーオーバーはいくらなら得になる? DUNK10とBIGの期待値を本気で計算してみた ← 今回
- 期待値100%でも儲からない? 分散と当選確率をシミュレーション
- 競馬の単勝80%、3連単72.5%は何を意味する?
- 予想が上手ければ控除率を突破できる?
- 100万円を宝くじ・DUNK・競馬に使ったらどうなる?
- ギャンブルと株式投資は何が違う?
計算上の注意
本記事では公式に示された当せん確率、賞金配分、1等上限、実際の販売口数などを使ってモデル計算しています。
特に「第1回DUNK10の期待払戻率約21.4%」は、
販売された各口が互いに独立にランダム生成される
と仮定した単開催モデルです。
また「DUNK10の約107.9%」は、
1等キャリーだけを十分大きくし、下位等級には通常配分のみが存在する
とした場合のモデル上の上限です。
実際の払戻額は、販売口数、買い目の重複、当せん口数、端数処理、開催状況、各等級への加算金などによって変化します。
本記事はくじ制度と確率を数理的に検討するものであり、購入を推奨するものではありません。
主な参考資料
- スポーツくじ「DUNK」公式:商品概要
- スポーツくじ「DUNK」公式:キャリーオーバーの仕組み
- スポーツくじ「BIG」公式:BIG・MEGA BIG・100円BIGの商品概要
- BIG第1656回結果
- 日本スポーツ振興センター:スポーツ振興投票
※本記事はくじの購入を推奨するものではありません。


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